【症例】「虫歯がないのに歯が痛い」確実な診査診断で原因不明の痛みを解決(クラックトゥース編)
- 投稿日:2022.01.26
- カテゴリー:根管治療(抜髄)
治療概要
治療内容 | 抜髄(初回根管治療)|精密根管治療 | 期間 | 2ヶ月(診断2回を含む) |
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治療回数 | 精密根管治療2回 診査・診断の為2回来院 | 費用 | 181,500円(税込)※支台築造処置を含む |
治療前の状態・主訴
患者様は、右下の奥歯が痛いことを主訴に来院されました。右側の歯で食べ物を噛むと、鋭く強い痛みがあるとのことです。
右下6番の歯には、金属の詰め物(インレー)が装着されていましたが、レントゲンならびに視診での診査では、虫歯を確認することはできませんでした。また、歯髄の生活反応(※)も正常であることから、一部分補綴(インレー)を除去し、う蝕(虫歯)の確認を行いましたが、金属の下にも虫歯は確認できず、処置後も痛みに変化は見られませんでした。
※歯髄の生活反応:生きている歯の神経の反応のこと。
そこで当院では「クラックシンドローム」を疑い、特別な方法を用いて診査を行いました。
「クラックシンドローム」とは、歯ぎしりや食いしばりなどにより歯に亀裂が入り、咬合時にひび割れが広がることによって、歯髄に知覚過敏のような痛みを誘発するものです。通常の歯髄診査などでは、原因となる歯の特定が困難なため、特殊な器具を使い診査・診断を行うことが求められます。
治療詳細
クラックトゥースの原因歯を特定できた場合、治療の選択肢は下記の2つです。
① 歯髄を保存したまま全部被覆冠(※)を装着する。
② 神経を除去した後、全部被覆冠を装着する。
※全部被覆冠:歯冠全体を覆う被せ物
① の場合、神経は残すことができますが、将来的にクラックが進行した際、歯髄炎に罹患し、強い痛みが出る可能性があります。
② の場合、神経を取ることになりますが、クラックが進行しても歯髄炎を回避することができます。
将来的にクラックがどのくらいのペースで進行していくか、もしくは完全に歯の破折を予防できるかは不透明なため、この選択は重要であると考えます。
今回の患者様は、精密根管治療を行うことで、治療の成功率が比較的高いうちに処置を完了させる②の治療を選択されました。精密根管治療は必要最低限の歯質削除量で治療が完了することから、有意義な選択と言えます。
治療後の様子
根管治療終了後、患者様が訴えていた痛みは10分の1程度まで消失し、現在は仮歯にて経過観察中です。
主な副作用・リスク
・精密根管治療は破折を予防する処置ではないため、歯内療法終了後に歯根破折を生じた場合費用対効果が低く感じられる可能性がございます。
・当院の補綴処置の保証期間は5年間ですが、3ヶ月〜6ヶ月の定期的なメインテナンス、定期検診に来院されていない場合は適用されません。
・精密根管治療はすべて自費の治療になります。
・根管治療終了後には術後性疼痛がある場合があります。
・術中に予期せぬ歯根破折が確認された場合、処置は中止させていただくことがあります。
・根管治療が予後不良の場合は歯根端切除術を行う必要があります。
<虫歯がないのに歯が痛い場合、専門的な知識をもった歯科医師の診査が大切です>
歯の痛みを誘発する原因は、多くの場合虫歯などからの歯髄炎、ならびに根尖性歯周炎の痛みを訴えて歯科医院に来院する方がほとんどです。しかしながら、なかには根尖性歯周炎や虫歯などの所見が見当たらないのに、痛みを感じる患者様がいらっしゃいます。
その多くはクラックトゥースや歯以外に原因があり痛みが起こっていることがほとんどです。専門的な知識をもとに正確な診査を行うことで、これらの一般的に言われる「原因不明の痛み」を解決することができます。
今回の症例の患者様のように、食事の際の歯の鋭い痛みは生活の質を大きく低下させてしまいます。また、歯の痛みの原因が分からなければ痛みを失くすことは難しいでしょう。
歯の痛みにお悩みの方は、正確な診査・診断を行うことができる歯科医師にご相談されることが大切です。
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宮澤 仁Miyazawa Jin院長紹介ページはこちら
専門分野
- ・根管治療
所属
- ・アメリカ歯内療法学会
- ・日本歯内療法学会
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