精密根管治療の症例

【症例】根管治療のトラブルケース:「破折ファイル」の対処法と考え方

精密根管治療の症例|根管治療のトラブルケース:「破折ファイル」の対処法と考え方|破折ファイル除去治療前後の比較画像2|目白マリア歯科

治療概要

治療内容 精密根管治療 期間 2週間(精密根管治療開始後)
治療回数 2回 費用 176,000円(税込)

治療前の状態・主訴

  • 精密根管治療の症例|根管治療のトラブルケース:「破折ファイル」の対処法と考え方|破折ファイル除去治療前のレントゲン画像|目白マリア歯科
  • 精密根管治療の症例|根管治療のトラブルケース:「破折ファイル」の対処法と考え方|破折ファイル除去治療前のレントゲン画像2|目白マリア歯科

患者様は、数年前にひどい虫歯のために根管治療を受けておられましたが、数日前より左下が腫れ始め、瘻孔(フィステル/溜まった膿を排出する穴)ができたと来院されました。

レントゲンで診査すると、左下6番(第一大臼歯)の近心根(歯の根のより中心に近い部分)に根尖性歯周炎が確認でき、腫脹の原因は根尖性歯周炎であると診断しました。

また、同じ部位の根尖に、透過性の異なる充填物(赤丸)が確認できました。これは、以前の根管治療で使用していた器具が根管内で折れて、そのまま取り残されている状態です。

このように、治療中に折れた器具のことを歯科では「破折ファイル」と言い、トラブルケースの1つとして扱われます。このように細く長い根管で破折したファイルは、再治療の際に根管を洗浄するための器具の到達を困難にし、また、破折ファイルを除去するための器具のアプローチも難しいため、結果として根尖部の洗浄が不十分になってしまいます。

今回は、このような「破折ファイル」が残存する症例を、再根管治療で治癒に導いたケースをご紹介します。

治療詳細

  • 精密根管治療の症例|【症例】・根管治療の際に取り残された器具(リーマー・ファイル)の除去|治療詳細のレントゲン画像|目白マリア歯科 赤矢印はスクリュー(ネジ式)タイプ築造体。
    黄色矢印は破折ファイル
  • 精密根管治療の症例|【症例】・根管治療の際に取り残された器具(リーマー・ファイル)の除去|根管内の破折ファイル|目白マリア歯科 赤矢印は除去時の破折ファイル

今回の治療はまず、上部の築造体にあるスクリュータイプ(写真1:赤矢印)の除去、ならびに、近心根にある破折ファイル(写真1:黄色矢印)の除去が、治療の際に手間となる工程でした。

築造体や破折ファイルの除去の際に、虫歯を除去するような回転切削器具を無闇に使用すると、余分な歯質を削ってしまい、歯の強度を著しく失う原因や、穿孔(パーフォレーション/穴が開くこと)という偶発事故を起こしたりする危険性が高くなります。そのため、回転切削器具の使用は最小限に抑え、専用の超音波ファイルを用いて除去するのが、理想的な治療であると考えます。

適切な箇所で、適切な器具を選択することが、非常に重要となります。

超音波ファイルを使用し、無事にファイルを除去した後は、通法通りの根管治療を行いました。下記の動画もご参照ください。

治療後の様子

  • 精密根管治療の症例|【症例】・根管治療の際に取り残された器具(リーマー・ファイル)の除去|治療直後のレントゲン画像|目白マリア歯科 根管治療直後
  • 精密根管治療の症例|【症例】・根管治療の際に取り残された器具(リーマー・ファイル)の除去|治療後3ヶ月のレントゲン画像|目白マリア歯科 根管治療3ヶ月後

根管治療を2回施し、2回目の治療では、術前に確認されていた瘻孔は消失し、すでに治癒傾向を示していました。

術後3ヶ月で、根尖部に確認されていた黒い透過像(根尖性歯周炎)は明らかな縮小傾向を示していたため、最終補綴(被せ物)の処置を行いました。

今後2年間の経過観察を行い、術後の予後を確認していく予定です。

主な副作用・リスク

・根管治療が予後不良の場合は、歯根端切除術にてマネージメントを行う必要があります。
・ファイルの除去が困難と判断した場合は、予後によっては歯根端切除術が必要です。
・術中に予期せぬ歯根破折が確認された場合、処置は中止させていただくことあります。

破折ファイルが病気の原因ではなく、細菌に感染させる環境下での根管治療が問題です

今回の症例では、無事に破折ファイルを除去し、根尖性歯周炎は治癒に向かいました。

しかし、この症例で勘違いしてはいけないのは、破折ファイルが病気を引き起こすのではなく、細菌に感染させるような環境下で治療を行い、かつファイルが破折することによって状況が非常に複雑化してしまう、ということです。

根尖性歯周炎は細菌によって引き起こされる病気なので、根管内に細菌が存在しなければファイルが破折していようが、穿孔(パーフォレーション/根管に穴が開くこと)していようが、病変は形成しないということを覚えておいていただきたい。(文献:The effects of surgical exposures of dental pulps in germ-free and conventional laboratory rats kakehash.1965)。

ラバーダム(※)環境下で行わない根管治療は、常に細菌を根管に流入させ、新しい根尖性歯周炎を誘発している行為でしかないのです。

(※)ラバーダム
治療対象の歯の周囲を覆う、ゴムのシートです。ラバーダムには、根管内に唾液を介して細菌が入るのを防ぐ役割があります。

ときに我々専門医でさえ、ファイルの破折を経験します。しかし、ラバーダムを使用している環境下では、そのファイルが除去できなくても根管を感染させることはありません。

ファイルを除去するために大きく歯を削らなければいけないのであれば、逆にファイルをそのままにしておくことも、作戦の一つになるのです。ファイルを除去しようと大きく歯を削ることで、歯の強度を著しく低下させる危険性があり、将来的に歯が長持ちするかどうかに影響を与える可能性があるからです。

破折ファイルを除去せずとも、6割の根尖性歯周炎は治癒が確認されると言う文献もあります。

ファイルを除去する際には、適切な手技、器具を用いて、適確な判断のもとに行うことが必要です。もし、根管治療でファイルが除去できなくとも、歯根端切除術にて根尖性歯周炎を治癒に導くことは十分に可能です。専門医であれば、状態に合わせた適切なマネージメントが可能です。

目白マリア歯科では、さまざまなトラブルケースに対応できる環境下で、患者様をお待ちしております。「他院で治療を断られた」「治療が進まない」などお悩みがある方は、一度、精密根管治療 初回カウンセリングを受診していただければと思います。

 

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院長 宮澤 仁

院長宮澤 仁Miyazawa Jin院長紹介ページはこちら

専門分野
  • ・根管治療
所属
  • ・アメリカ歯内療法学会
  • ・日本歯内療法学会

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